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雑踏。 灰色のコンクリート はげかけた横断歩道 赤、青、黄を繰り返す信号機のなか めぐる季節を感じそびれている人たちの息づかいのなかで うずくまり目を閉じて 増えては減りゆく足音を聞いていたい (コンクリートの下で呼吸もできずに眠る土をおもう) ビ…

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ひとりきりで映画を観る。 昏い影や、かなしみに美しさを見ないあなたは、あまりある余白を見つめられない。 ひとりで、映画を観る。 スクリーンと、ビロードの椅子。映像のない映画を見つめて笑む。記号を追う目を追っている。八畳の部屋。私だけ。 窓の外…

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夜の水面をおよぐ ひかりが水かきにひっかかり、 くだけて流れた。 声がくぐもって 少しずつ遠のく 耳のとなりで コチコチ時計の音が鳴る マンホールが抜けて 夜がスルスルこぼれている カスタード色の光 のびゆく 片影

2109.08.23

故郷はいつだって美しい。 故郷。まぼろしのようなふた文字。 朝焼けのふとんの中で、まどろみながら聞くカラスの声。霧がかった、坂道だらけの街。青い郵便ポスト。揺れる金髪。かなしいぐらい広い空。片足を失くした猫の、日差しを受けたレモン色の瞳。ガ…

21.54

食事は、時おり正気を保つのがむずかしい。 皮を剥がれ、原型を失い、生き物のにおいを感じさせない、死体の盛り合わせ。食事。恐ろしいのに、なんてかぐわしい。 焼いて、蒸して、茹でて、ぐちゃぐちゃにして、死を食べてることなんて忘れて、「ブタさんも…

2017

あなたが聞き続ける音楽や、 着続ける服、使い続ける道具、 それらの中にわたしは、 わたしの知らないあなたを見つけます。 あなたは、けしてわたしを見ない。 だけどわたしは、その時その時の、 誰かや何かに夢中だったあなたの 表面を撫でるように、 残像…

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春しか愛せない。 通りすぎる風にばかり恋をする。 コンクリートは花が咲くので寂しい。 わたしには46億年の記憶。 何度繰り返しても、秋のにおいに泣いてしまう。 (音のくぐもる地下鉄は水槽のようでした)おぼれても、うつくしい。おぼれても青く揺れるばか…